不労所得とは働かないことよりも大変である。

不労所得と資本主義の関係性

不労所得主義はつねに高低差を探し求め、作り出し、それ自身を維持し ようとするようになった。

 

かくして、不労所得主義は世界中で格差を拡大し、貧困層を作 り出していくようになっていった。 すでに述べたように、アダム・スミス以来の近代経済学では、マーケット・メカニズムという「見 えざる手」に委ねれば、資源の再配分はうまく行なわれ、失業もなくなるというのがその基本主 張になっていた。マーケットの規制を緩和し、小さな政府を目指すべしとする新自由主義思想も また、その延長線上にある。 そして現代の経済学はこの思想を土台として、多くの経済学者たちによって精綴に組み立てら れた「知の体系」であると言える。スティグリッッが「現代の不労所得主義で『見えざる手』 が作動しないのは、市場原理の働きを阻害する要因があるからだ」と主張しているのも、「経済学 の理論体系に間違いがあるはずがない」と心から信じているからであろう。

 

資本主義社会の不労所得

 

しかし、近年の資本主義経済のあり方を見るにつけ、「この理論を鵜呑みにするのは危ない」と考 えるに至った。もっと正確に言うと、近代経済理論の「前提条件」を疑ってみる必要があると考え るようになった。いくら、ロジックが正しくても、その前提に無理があるならば、そこから導か れる結論の有用性はなくなるからである。 経済学における最も重要な前提の一つは「完全競争」という考えである。「完全競争」とは以下の 四つの条件が同時に満たされている状態のことである。

 

もちろん、この四つの条件はあくまでも「理想型」であって、現実にはほとんど充足されること がない。そのことは経済学も認めているわけだが、しかし、より理想に近づけば、それだけマー たしかに、インターネットの普及によって、誰もがリアルタイムで世界中の情報にアクセスす ることができるようになったことは、市場経済にとって朗報であった。 インターネット以前の世界では、たとえばニューヨーク証券取引所(NYSE)の最新株価にし てもロイターなどの通信社と情報配信の契約を直接している人たちがまず速報に接し、一般の投 資家や消費者がニュースを知るのはその後であった。

 

 

しかし、IT技術はそうした「情報格差」を 解消した。インターネットを使えば、世界中のストック・マーケットの情報を即時に、しかもほ とんど無料に近いコストで知ることができる。 だが、そうやって情報へのアクセスがどれほど平等になったとしても、その情報は言語化、も ケット・メカニズムが適切に働くようになると考えてもいるわけである。

 

不労所得